当時の不良言葉(スラング)スラングおおかたの有名な隠語はすでにあちこちで紹介されているので、ここではあまりスポットのあたらないスラングを紹介することにするが、何はともあれ不良としての絶対的な価値観を表す「シブイ」と「マブイ」は不良言葉の決定版と言える。 何を持って「シブイ」のか未だに不明であるが、イイ歳こいた爺になっても未だにシブイを連発する困った親父もいる。 自分がもう十分渋くなったのだから、いい加減にやめたほうがよいと思う。 当時のツッパリ系美少女を形容するにあたって、この「マブイ」がよく使われた。 制服時は長いスカート、私服時はミニのタイトスカートと使い分け、マブさを競った。 不良少女をマブイと形容するときは、どことなく淫靡な連想を醸し出す趣さえあった。 もともとは玄人の隠語だが、不良少年の耳には「マブイ」=「最高」というような価値基準が適用された。後年「ハクイ」などと言うのも出てきたが、これも玄人隠語からの流用である。語感としてはマブイに比べやや背徳性のある響きを持っていた。 同様に「サクイ」というのもあったが、これはバンドマン用語の逆さ読みを使った隠語「クサイ」である。グラサン(サングラス)なども同様で、一般的にも用いられたりしていた。 ○プラボン ご存知シンナー遊びの決定版プラモデル用ボンド「プラボンド」。あんぱん小僧にとっては極上の一品。効き方が違うらしい。あまりの大ヒットに製造中止となる。希少在庫を求めて埼玉や茨城方面に買いだしに行った不良もいるとか。 ○タクト ごく一般的に文房具店で入手できたお手軽ボンド「コンタクト」。ラリッた拍子で体中にボンドの糸をくっつけてしまい、後で大変な目にあった不良も少なくない。 こちらもあまりのブームに内容物トルエンの規制が行われたため、後年は単なる家庭用ボンドに成り下がってしまった。 ○純トロ 元々は新宿のフーテン族から広まったシンナー遊びだが、いつのまにか不良高校生の間で全国的規模のブームとなってしまい、小売店で売られる商品にはトルエンの一斉規制が行われたため、一般には入手困難となった。そこで一旦地下に潜ったこの遊びは、玄人筋の商売となり、リポビタンDやオロナミンCに瓶詰めトロールとして、新宿東口駅前を中心に1本千円の高値で販売され始めた。 この闇販売地区を総称して新宿グリーンと呼び、合言葉のセールストークは「1本ヤリ千」だった。ヤリ千とは1千円の意味の符牒隠語。 縄張りやモグリの売人なども現れ、内容物を薄めたり、不純物を多く含んだものなども出回ったため、純正トロール、略して「純トロ」というブランドさえ生まれた。 当時、都下の薬品工場や塗装業者から、一斗缶入りのトルエンが大量に盗まれるという事件も起こったりした。 ○パープリン/パープー 頭の弱いヤツ、バカなヤツを揶揄するときに用いられた。 語感からは不良の陽気さがうかがえる。本当のバカというよりは、間抜けなことをしでかしたヤツに与えられる称号とも言えなくもない。 ○チャンサイ かっぱらい、盗みの意味。これに限らずツッパリ・スラングの多くがハングル(韓国/朝鮮語)から来ているのは何故だろう。 ぎっちゃう、ぎっちゃった、などの言い方もある。 ○フケル さぼるとか、逃げるとかいうときに用いられた。 集団万引きが見つかって「フケロッ!」と叫んだやつがいたが、追ってきた店員を老人にする魔法をかけた呪文のようだった。ちなみに叫んだ本人が捕まってしまい、余罪がどんどん発覚して一気に老け込んでしまった。 |